第41話 端午の節句
5月5日は「こどもの日」です。桃の節句の3月3日が女の子の祝日なら、「こどもの日」は端午の節句といって男の子の祝日です。なのに男の子の祝日だけを休日にするのはよくないので、名前を変えて「こどもの日」になったのだそうです。男の子にとって5月5日は祝日が2つ重なったようなお目出度い日になりました。
さて端午の節句の食べ物は柏餅と粽(ちまき)。柏餅は日本原産ですが粽は中国伝来だそうです。柏餅と粽に共通しているのは、どちらも植物の葉で包んであるということです。そこで今回は植物の葉でご飯やお餅を包むことの意味を考えてみました。ここにも薬食同源があるような気がします。
自然のなかで木も草も植物はみな強く逞しく育っています。自然のものが強いわけは、植物の免疫とも言われる抗菌物質があるからで、その代表がポリフェノール。そういえば昔小さな分子のフェノールが病院の消毒薬に使われていました。クレゾールのことです。病院へ行くとまず感じるのがクレゾールの独特の臭いでした。クレゾールの仲間は胃腸薬・正露丸にもなりました。一度でも正露丸を飲んだことのある人は、あの強い臭いを忘れることはできません。
さてさてクレゾールの臭いはしなくても、ほとんどすべての植物がもつポリフェノールには抗菌作用があるのです。そして昔からポリフェノールを多く含む植物が漢方薬や民間薬になったのです。おっとそう云えば、犬や猫だって病気のときは生の草をかじっていますよ。
柏餅と粽の話に戻りましょう。ポリフェノールをたくさん含んだ柏の葉や笹の葉にも抗菌作用があるのです。枯れた柏の葉にだってポリフェノールは残っています。そしてそれがご飯やお餅が痛まず腐らず長もちするようにしてくれます。ポリフェノールの抗菌作用は、今はやりの抗酸化作用が知られるずっと前から、保存食品に使われていたのです。
端午の節句の食べ物には、男の子が強く逞しく育つようにと、薬食同源の親の思いが込められているのかも知れません。最後に女の子のために書き添えますと、紫外線から葉を守るポリフェノールは、食べたときに白い肌と透き通った瞳を守ってくれますよ。柏の葉や笹の葉は食べられなくても、蓬(よもぎ)の葉をたっぷり煉りこんだお団子もお節句にはお似合いです。