第76話 ウイズコロナで思うこと

 パンデミックが3年目を迎えて、ウイズコロナ生活が当たり前のようになってしまいました。師走の半ばを過ぎて、新規陽性者数はベースラインを維持したままですが、誰も「そろそろマスクは・・・」という人は居ません。マスクをして外出することが当たり前になっているのです。

 それどころか今一番心配なことは、オミクロン株という新しい変異株が出現したこと。オミクロン株は感染力が強い割には重症化しにくいとのことです。それでも、「未知のウイルスに感染したら何が起こるか分からない」という不安が消えないのです。何せ、風邪は万病の元ですから、マスクをつけて、手洗いをしていれば、インフルエンザや普通の風邪だって、罹る心配が減るのです。

 ヨーロッパで拡大し続けるオミクロン株が、日本への水際をすり抜けて市中へ忍び込んでいます。まだ拡大はしていませんが、首都圏の担当者は濃厚接触者の掘り出しに懸命です。何時まで持ちこたえられるか分かりませんが、もし突破されたら第6波が始まるとのことで、「かも知れない心配」の繰り返しで年を越しそうな気がします。

 そんな中で1つだけ確かなことは、感染する人は100人に1人程度で、ほとんどの人は感染していないということです。もし運悪く感染しても重症化はしない場合が多いので、後遺症も出ないで済むだろうということです。ではその圧倒的に多い「感染しない人」になるにはどうしたら良いでしょうか?自然免疫力を高める食生活については、第74話に書いたので、今回は未だ書いていないことをお伝えしたいと思います。

 中国原産で、日本人も好んで飲む緑茶のお話です。実は緑茶を好むのは主に日本人で、中国では烏龍茶の人気が高く、欧州では紅茶が圧倒的です。どれも原料となる植物は同じですが、発酵工程の差が製品の特長を生み出します。ポリフェノールの種類も発酵中の化学反応によって異なってきますが、抗酸化性という点では共通の作用を示します。

 さて静岡県はお茶の産地として有名で、県を代表する農産物の研究に予算をつけて応援しています。その成果の1つとして、静岡県立大学薬学部は「お茶でうがいをすると、インフルエンザを予防できる」ことを発見し、県内の小学校と特別養護施設で「お茶うがい」を励行しています。当初の研究によれば、お茶うがいをする群でインフルエンザに罹った人は、水うがいの群の10分の1だったそうです。お茶に含まれている有効成分を調べたところ、エピガロカテキンガレート(通称は緑茶カテキン)であることが判明しました。ではお茶は新型コロナウイルスに対しても何か効き目をもっているでしょうか?

 つい最近になって、「もっている」との論文が発表されました。順を追って説明しましょう。実験したのはポーランドの研究者で、使った材料はウイルスの入った溶液と、ヒトの気道から採取した上皮細胞です。その細胞の表面には新型コロナウイルスの受容体が、恐らく数千個~数万個もあると言われています。この細胞を入れた溶液に、ウイルスの溶液を加えると、実際に感染が起こりました。そして次の実験として、細胞溶液の中にあらかじめ緑茶カテキンを溶かしておいたのです。すると、ウイルスを加えても細胞に感染することはありませんでした。つまり、緑茶カテキンには、ウイルスが受容体に結合しなくなるという効き目があるのです。

 お茶うがいの他に、お茶を飲んでも効くかな?と期待したのですが、お茶を飲んでも血中濃度が有効量まで達しないので、期待できませんと書いてありました。でも論文に書いてあるその差は3倍に過ぎません。日本のお茶文化はポーランドとは違いますから、良い方法があるはずです。ちょっと調べてみましたら、煎茶を80度ぐらいの湯で淹れたときに、溶け出すエピガロカテキンガレートの量が最大になるのだそうです。筆者は考えました。そして、一番煎じは飲むことにして、二番煎じから後は「うがい用」に冷蔵庫で保存することにしています。

薬食同源一覧