第81話 ペットボトル茶でコロナ感染予防

 つい最近、筆者もビックリの論文発表がありました。長崎大学によれば、「ペットボトルの緑茶には新型コロナ感染の予防と治療効果がある」というのです。

 緑茶の抗ウイルス効果は以前から知られていたことで、数年前にはお茶どころ静岡大学が「お茶でうがいするとインフルエンザに罹らずに済む」と発表し、静岡県の支援もあって、小学校や介護施設で「お茶うがい」を奨励しました。すると静岡県でインフルエンザが流行しても、うがいを励行した施設では感染者がほとんど出なかったとのことでした。もっと以前からの言い伝えとして、筆者が子供の頃には「お茶うがいすれば風邪に罹らない」と周囲の大人達から言われました。

 話を長崎大に戻します。実は緑茶の新型コロナ感染の予防と治療効果については、1年前にも発表がありました。京都府立医科大学の論文で、緑茶の抽出液を乾燥した粉末(乾燥エキス)に効果があるというデータでした。今回の長崎大の実験と何処が違うかと言いますと、長崎大が実験に使ったのは夏場に良く売れて、冬にもそこそこ人気のあるペットボトル緑茶だということです。

 一流の学術誌に論文を発表するには新規性がないと受理されません。そのために、以前の発表にはない新規制を書く必要があります。長崎大の研究者がペットボトル緑茶で実験した理由は、その「実用性」に着目したからです。乾燥エキスの効き目が非常に強いので、「ボトル茶は薄めても効く」というデータに新規性を見出したのです。これはもしかするとイグノーベル賞に値するかも知れません。

 何はともあれ、日本人だけでなく東アジア(日本、中国、台湾、韓国)では大人気のお茶の効果は、生活習慣をちょっと変えるだけで、誰でも何処でも恩恵を受けられるので、とてもありがたい研究結果だと言えるのです。このニュースがTVや新聞で報道されなかったのは不思議ですが、薬ばかりを眺めていると灯台下暗しになってしまう典型的な例ではないでしょうか?

 ではそのペットボトル緑茶の効き目についてやや詳しく紹介しましょう。まずは関与成分が何かといいますと、よく耳にする「カテキン」です。これには2種類あって、1つは舌を噛みそうな名前の「エピガロカテキンガレートEGCG」、もう1つは「エピカテキンガレートECG」です。前者は後者の何倍も強い効き目を示します。

 次に、どのくらい効くかの話です。1年前の京都府立医大の研究は薬理学なので、量と効き目の関係が明らかになっています。そして長崎大の研究は、ペットボトル緑茶を数百倍に薄めても効く」ということなので、筆者は薬理学実験データと市販ボトル茶のEGCG含有量を比べてみました。すると確かに、濃茶なら500倍、伊右衛門やお~いお茶なら200倍に薄めてもうがい効果を期待できるのです。でもうがいをする時間は短いので、実際にはもっと濃い濃度が必要で、データに基けば「ボトルのお茶は薄めずにうがいする」のが効果的です。

 では治療効果はどうかと言いますと、臨床試験がないので正確なことは解りませんが、1日に飲む量が人によって様々なので、大雑把に言って1日2~3杯、コップ1杯は200mLですから、小さいボトルなら1本程度と推測できます。

 さて皆さん「信じよさらば救われん」ですから、厚労省が勧める予防法「人混みのマスクと手洗い」を守りながら、食後1日3回のお茶を、これまでとは一味違う気持ちで飲んでみてはは如何でしょうか。コーヒー派の方は、コーヒーだけでなく、ときにはお茶も飲むのが良いそうです。

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