2026.01.05
第100話 必須栄養素の話
明けましておめでとうございます。
「薬食同源四方山話」が100回を迎えました。嬉しい限りです。2009年から年6回のペースで、ざっと16年、時には役に立った話、ビックリした話、そうでもなかった話など色々あったと思いますが、人それぞれの食生活には違いがあるので、今年も色々な話題に触れてみたいと思います。とはいえ「一年の計は元旦にあり」ですから、先ずは誰にとっても絶対に必要な必須栄養素についてお話ししましょう。小学校でも習ったビタミンの話も出てきますので、当時を思い出しながらお読みください。
さて、厚労省が「1日に必要な推奨量」を定めている必須栄養素は全部で40種類です。筆者が毎日飲んでいるコーヒーには、B群ビタミンのナイアシンと必須ミネラルのマグネシウムの2つが多く入っています。では、40種類を詳しく見てみましょう。
●必須栄養素の種類
① ビタミン 13種類
② ミネラル 16種類
③ アミノ酸 9種類
④ 脂肪酸 2種類 計40種類がある。
●必須栄養素の全体像
① ビタミンには、A, B群(B1, B2, B6, B12, ナイアシン, パントテン酸, 葉酸, ビオチン), C, D, E, Kがある。 ② ミネラルには、カルシウムCa, リンP, カリウムK, ナトリウムNa, マグネシウムMg, 塩素Cl, 硫黄S, 鉄Fe, 亜鉛Zn, 銅Cu, マンガンMn, ヨウ素I, セレンSe, クロムCr, モリブデンMo, コバルトCoがある。
③ 必須アミノ酸には、ヒスチジン, イソロイシン, ロイシン, リシン, メチオニン, フェニルアラニン, トレオニン, トリプトファン, バリンがある。
④ 必須脂肪酸には、リノール酸(ω6), α-リノレン酸(ω3)がある。
●必須栄養素の役割
① ビタミンの役割は、 酵素、受容体、抗体、その他の機能性タンパク質を活性化して、「生命の化学反応を正確に動かす鍵」になっている。
② ミネラルの役割は、骨や歯の形成、神経・筋肉の働き、酵素反応の補助、体液バランスの維持など、「生命活動の幅広い基盤」を支えている。
③ 必須アミノ酸の役割は、非必須アミノ酸とともに、「タンパク質の原料」になっている。
④ 必須脂肪酸の役割は、細胞膜を構成して、その柔軟性を維持することと、EPA、DHAなどに変化して、さらに、プロスタグランジンやロイコトリエンなどの生理活性物質になって、血圧を調整し、炎症反応と免疫応答に関与する。つまり、「細胞が外敵と戦う基盤」を作っている。
●必須栄養素と機能性タンパク質の関係
健康な細胞にとって、機能性タンパク質(以下、単にタンパク質)の働きはとても重要です。そのタンパク質は必須栄養素のどれかを選んで結合して、はじめて力を発揮します。もしその必須栄養素がなくなれば、タンパク質は無力となって、欠乏症が起こります。40種類の必須栄養素の中には、たった1つのタンパク質と結合するものもあるし、100種以上のタンパク質と結合するものもあります。そういうタンパク質は、100種類以上の異なる働きをもっているということです。
そこで必須栄養素ごとに、結合するタンパク質の数を調べてみました。すると一番多いのはミネラルの亜鉛で、ざっと1,000種類のタンパク質と結合するそうです。ですからもし亜鉛が欠乏したら、大変なことになってしまいます。2番目はマグネシウムで300種類以上のタンパク質と結合します。そして3番目はビタミンB群のナイアシンなのですが、ナイアシンは体内で補酵素NADになってからタンパク質に結合するので、今回の調査ではNADと結合するタンパク質の数を調べました。するとその数は数百種類以上で、マグネシウムに匹敵する多数なのです。以上の3つ以外の必須栄養素の場合は、どれも数個~数十個の少数なので、上記の3つとの差は非常に大きいことが分かります。
では次に、亜鉛、マグネシウム、ナイアシン(NAD)の3つを全部結合するタンパク質はあるでしょうか?実は筆者はないだろうと思っていたのですが、調べてみるとたった1つだけありました。意外なことにメタノール脱水素酵素です。次に、3つのうちの2つを同時に結合するタンパク質を探してみました。先ず亜鉛とマグネシウムの2つについて書いた論文はありませんでした。亜鉛とNADについては、アルコール脱水素酵素の仲間が数十種類みつかりました。最後に、NADと結合する酵素タンパク質の多くがマグネシウムを同時に結合することが分かりました。その数は100を超える多数に上ります。NADとマグネシウムのこの不思議な関係は何を意味しているのでしょうか?NADとマグネシウムにまつわるもう1つの不思議な話を紹介しましょう。
NADが結合するタンパク質のほとんどが酵素タンパク質で、その全てがマグネシウムと結合するのです。NADの最も重要な生理作用はミトコンドリアでエネルギー分子ATPを作ることです。この生合成過程で働く酵素もマグネシウムを必要としていますが、驚くべきことに、できたATPそのものもマグネシウムと結合しているのです。そしてATPは、マグネシウムと結合することで、エネルギー分子として働くことが出来るのです。NAD-ATP-Mgの三つ巴の関係は、細胞にとって無くてはならない必須の関係なのです。
それでは最後に、亜鉛とマグネシウムとナイアシンを同時に多く含む食べ物があれば、最高の健康食品になると思うのですが、そんなものはありません。では、亜鉛とマグネシウムの2つを含む食べ物はと言えば、ナッツ類とゴマがあります。亜鉛とNADを多く含む食べ物はレバーが代表的、そして最後に、NAD(ナイアシン)とマグネシウムを同時に多く含む食品とは、これこそ筆者が毎日飲まずにはいられないコーヒーなのです。
さて、お分かりいただけたでしょうか?そういう必須栄養素の背景を持っているコーヒーは、人類とともに千年以上を過ごしてきた奇跡のエネルギー飲料なのです。地中海食(文献1)や日本食(文献2)のような健康な食事とともにコーヒーを飲むことが更なる健康をもたらします。
文献1) Navarro AM, Martinez-Gonzalez MA, et al. Coffee consumption and total mortality in a Mediterranean prospective cohort. Am J Clin Nutr 108:1113-1120, 2028.
文献2) Saji N, Tsuduki T, et al. Relationship between the Japanese-style diet, gut microbiota, and dementia: A cross-sectional study. Nutrition 94:111524, 2022.