第84話 野菜にニコチンが入っていること知っていますか?

 煙草のニコチンは肺癌の原因ではありません。真犯人は煙草の煙に含まれているタールです。そこには幾つもの発癌物質があります。だから煙草を燃やさずに口に入れても癌にはなりません。勿論、肺が黒くなることもありません。

 あまり知られていませんが、煙草はナス科の植物です。では、ナス科の野菜にはどんなものがあるでしょうか?なかには「知らなかった!」というような名前もありますよ。ついでに、日頃お馴染みのアブラナ科とウリ科の野菜も書いておきましょう。

●ナス科の野菜
 ナス、ジャガイモ、トマト、唐辛子、ピーマン、パプリカ、獅子唐
●アブラナ科の野菜
 白菜、キャベツ、水菜、小松菜、カブ、ブロッコリー、カリフラワー、チンゲン菜、菜の花、クレソン、大根
●ウリ科の野菜
 ウリ、キュウリ、カボチャ、ズッキーニ、トウガン、ニガウリ(ゴーヤ)

 これらのうち、ニコチンが含まれているのは煙草と同じナス科の野菜だけです。アブラナ科にもウリ科にもニコチンは全く入っていません。逆にナス科の野菜には例外なくニコチンが入っているのです。

 ナス科の野菜は、毎日の食卓に色どりを添えてくれます。味もまちまちで、五味五色がほぼ揃っているのです。先ず五色を並べると、緑(青)はピーマンと獅子唐、黄はジャガイモとパプリカ、赤はトマトと唐辛子、黒はナス、でも白は見当たりません。次に五味を並べると、甘味はパプリカ、酸味はトマト、苦味はピーマンと獅子唐、辛味は唐辛子、旨味はどれもと言えばどれもでしょう。

 では、ナス科の野菜にニコチンはどのくらい入っているのでしょうか。平均して1キログラム当たり0.05マイクログラムという微量です。こんな微量のニコチンなら、プラセボ効果がない限りは効きません。微量のニコチンにプラセボ効果はあるでしょうか?この疑問には、「これまでそんな臨床試験が無いので分からない」としか言いようがありません。

 ニコチンは、いわゆる病気を治すという薬にはなっていませんが、禁煙のための補助薬としてなら使われています。しかしそれでは薬食同源の意味合いとは違います。一歩下がって、薬になる可能性はあるでしょうか?それならば大いにあり得る話なので、説明しましょう。

 自律神経の一部に副交感神経があります。その他に感覚神経と運動神経があります。それらの全てではありませんが、少なくとも副交感神経と運動神経には、アセチルコリン作動性神経という大事な神経が身体中に張り巡らされています。その神経が脳から手足の指先まで届く間に、神経接合部という仕組みを通過します。アルツハイマー病の治療薬アリセプト(エーザイ)は、その接合部を刺激することで認知力の低下を防ぐとされています。

 ところで、全身にある神経接合部の半分くらいに、ニコチン作動性受容体というのがあって、ニコチンに反応して、その先の神経を刺激するのです。その結果、例えばパーキンソン病の手足のしびれや歩行困難が改善することが解っています。つまり、ニコチンは薬になる可能性を秘めた、ナス科野菜の成分なのです。

 では最後に、あり得ない話ですが、あったら面白そうな話をしましょう。世の中には一風変わった人がいるもので、激辛が大好きな人達がいます。わずかとは言えどもニコチンを含む唐辛子が大好きな人達で、唐辛子で真っ赤になったラーメンのスープを、平気で飲み干してしまいます。もしかしたら、激辛大好きな人達は唐辛子のニコチン中毒になっているのかも知れません。

 トマトでも同じです。トマト大好きなスペイン人は全員トマトニコチンの中毒になっている・・・などと言う話は、ひょっとするとあり得る話かもしれません。

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