2024.01.04
第88話 総合ビタミンB剤の薬食同源は?野菜です
明けましておめでとうございます。
年のはじめのおせち料理を食べながら、ビタミンB群を探してみませんか?下の表は「〇〇を多く含む食品」でネット検索して作ったものです。
B1(チアミン)・・・・・・胚芽米、豚肉
B2(リボフラビン)・・・・納豆、卵
B3(ナイアシン)・・・・・マグロ、牛乳
B6・・・・・・・・・・・・マグロ、バナナ
ビオチン・・・・・・・・・卵、レバー、アーモンド
パントテン酸・・・・・・・卵、牛乳
葉酸・・・・・・・・・・・小松菜
B12 ・・・・・・・・・・・レバー、牛乳
ビタミンB群は、あらゆる種類の酵素の補酵素となって、生きるためのエネルギーを生み出しています。それほど大事なビタミンB群ですが、上の表を見ると、全部で10種類の食べ物を摂らなければなりません。もっと効率の良い方法は無いものでしょうか?実はそのために総合ビタミンB剤があるのですが、薬を飲む前にできることは無いでしょうか?
最近よく耳にする腸内細菌がビタミンを作っているという話があります。しかしよく調べてみますと、そういう腸内細菌を生きたまま食べる、いわゆるプロバイオティクスのことで、食べものの話ではありません。薬食同源というからには、何か食べ物を食べると、それを栄養にして必要な腸内菌が増えるという順番であって欲しいのです。
そこで更に調べてみると見つかりました。随分と昔、戦後間もない頃の論文に、腸内菌に食べ物を与えるという考え方に立って、セルロースを食べる実験をしたのです。研究の目的は「セルロースがビタミンB群の排泄量に及ぼす影響」を明らかにすることで、京都府立医大の藤田秋治教授とお弟子さんの、たった二人で行った研究でした。実験法の内容を簡潔に紹介するので、1つのビタミンの証明に2ヶ月を要した二人の忍耐力を感じとって下さい。
先ずはじめの1週間は普通の食事を食べながら過ごします。そして毎日の排泄物を集めます。次の1週間を肉食で過ごし、またその次の1週間は「肉食+セルロース」で過ごしたのです。そしてビタミンの変化がセルロースで起きたことを確かめるために、第4週はセルロース抜きの肉食に、最後の週は普通食に戻したのです。ここまでの全行程は5週間ですが、これで終わりではありません。引き続いて「菜食+セルロース」を調べるために3週間をかけて、結局2ヶ月間の食事管理を行ったのです。
しかし本当に忍耐を要したのは、ビタミン排泄量を測定する実験でした。毎日採取した尿と糞便を、その日のうちに測定する・・・冷凍庫のない時代に、集めた試料はその日のうちに、徹夜してでも測定し終える・・・今なら「アカハラ/パワハラ」騒ぎになってしまいます。
何はともあれ実験開始2か月後に「セルロース食はビタミンB群の排泄量を増やす」ことが証明されました。「肉食+セルロース」より「菜食+セルロース」の方がずっと多いことも解ったのです。測定したビタミンの数は6つ(ビタミンB1、B2、B3のニコチン酸、B6、葉酸、パントテン酸)、それらが6編の論文となって発表されました。
さてこの研究で最も大切な発見は、「ニコチン酸が大腸のなかでできること」です。その意味するところについては、稿を改めて書くことにして、今回は、「野菜の繊維質セルロースは総合ビタミンB剤に匹敵する食文化の華」であることを強調しておきたいと思います。そして、野菜不足になりそうな日には、食品添加物になっている粉末セルロースを、ほんの数グラムだけ食べれば十分ということなのです。