ページの先頭です

ページ内移動用のリンクです
ヘッダーメニューへ移動します
サイト内共通メニューへ移動します
本文へ移動します


岡希太郎先生
ここから本文です

第50話 良薬は胃にも苦し

 あれっ!? 良薬は口に苦し・・・ではないですか?

 ええ、言い伝えはそうですが、ごく最近、苦味を感じるのは舌だけではなくて、胃でも感じていることがわかったのです。どういうことなのか、論文を読んでみました。

 わかったことは、苦い食べものが胃に入ると、胃が苦いと感じるわけではなく、胃酸を出すということだそうです。どうして胃酸が出るのかというと、第1に、食べたものを早く消化しようということで、消化酵素の働きを強めるため、第2には、腸の助けも借りて消化を進めるように、腸への出口を開くためだそうです。結果として、胃と腸の働きが良くなって、食べたものを早く消化できるようになるのだそうです。これは確かに新発見です。

 もう1度整理すると、胃が苦味を感じるということは、消化を助けて、限られた食べものの栄養を速やかに消化・吸収するためだったのです。しかしこれには反論もあります。その反論とは、「舌が苦味を感じるのは、毒を食べないようにとの哺乳類進化の賜物」というのです。確かに今まではそうでした。何故なら、苦味を感じるセンサーの苦味受容体が、舌だけでなく胃壁にもあるなどとは誰も考えなかったからです。

 胃壁の細胞にも、舌にあるのと同じ苦味受容体が見つかりました。この苦味受容体に苦味成分がくっつくと胃酸が出てくるのです。その目的が毒を消すためなのか、食べ物を消化して栄養にするためなのか、多分どちらもあり得る話に思えます。その区別は兎も角として、薬食同源の立場で注目したいことは、胃が苦味を感じて胃酸を出すことを知らなくても、私たちの祖先は「苦くても食べられるものを食べて胃をすっきりさせる」ことを知っていたのです。そしてそのことを利用して「苦味健胃薬」を作って胃のもたれを癒してきたのです。

 苦味健胃薬には専ら生薬が使われました。そして今も使われています。よく使われるのは、オウバク、センブリ、ゲンチアナ、ニガキなどで、どれが一番苦いかと言えば、センブリという意見が多いようです。日本でセンブリが使われるようになったのは、あの有名なシーボルトが、欧州のゲンチアナと間違えたのがきっかけだったとの説も伝わっています。

 近年になっても、センブリの健胃作用をうまく説明できる成分は見つかりませんでした。何故かと言えば、薬理学者の頭の中には、「薬としての作用は化学物質が出すのであって、味が薬理作用を出すわけはない」という知らぬが仏の常識しかなかったからではないでしょうか。今となっては、健胃薬は専ら苦味生薬が主流で、合成薬は皆無という現実が、薬の歴史の皮肉な話になるのです。

 話を食に戻しましょう。苦い食べものが食欲を刺激することはよく知られています。ある食品会社のアンケート調査によれば、第1位は夏に美味しいゴーヤチャンプルだそうです。そして2位と3位にはビールとコーヒーが続いています。苦い食べものは意外と少ないことに気づきます。私たちの祖先が「苦いものは毒」との言い伝えで、苦い植物を畑で栽培しなかったからかも知れません。つまり、身の回りに苦い食べものが少ないという現実が、苦味健胃薬の需要につながったとも言えるのです。

 「良薬は胃にも苦し」現在の創薬研究を目指す人たちにも是非教訓にして頂きたい話です。

クラフト株式会社は「患者様のニーズに応え、質の高い医療サービスを提供し、地域社会から信頼される企業づくりを目指す」ことを基本理念とし、皆様の個人情報を厳正な管理のもと、適切に取り扱います。

ホームページからのお問い合わせでご入力いただくお客様情報は、SSL暗号化通信により保護されております。

ページの先頭へ戻る

クラフト株式会社 Copyright (c) KRAFT Inc. All Rights Reserved.
ページの終わりです